【藤原さんの育児学Vol.5】スウェーデンの小学校(後編)

レインディア藤原さん
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スウェーデンの小学校“就学前”クラス

 スウェーデンの小学校には“小学0年生”と呼ばれるクラスがあります。

 日本の年長さんに当たる5才の子どもが通いますが、年度が9月から始まるので、半年のズレがある感じでしょうか。今回伺ったリングスバーグ小学校にも、このクラスが用意されていて、日本の幼稚園との違いが見て取れました。

 この制度には、とても興味がありました。というのも、日本の子どもたちの教育格差は、義務教育が始まる時点ですでに存在しているため、大人になった時の所得や生活水準の“格差”に繋がっていると思うからです。

 私は、保護者向けの講演などでも「かけ算ができたり、漢字で名前が書けたりする子どもと、名前も書けない、1+1も分からない子が一緒の1年1組で義務教育が始まることは、子どもにも先生にも負担です。」と伝えていますが、小学校をどうスタートするかは、とても大切なことだと思います。

 では、実際この就学前クラスでは、どのような事が行われ、日本の幼稚園と何が違うのでしょう?

 結果からいえば、教えている内容はそんなに違いありません。大きく違うのは“小学校の校舎の中”に存在していることでしょうか。この利点は、小学生の兄弟と一緒に通えたり、小学校に進学後も就学前クラス担任の先生とふれあえたりすることでしょう。

 私の子どもたちが通っている米子の幼稚園では、「げんきだった会」という企画を設けていて、小学校に上がった後に幼稚園で再会する場を用意してくれています。子どもたちがとても喜ぶ姿を見ているので、一緒に遊んだ先生、自分のことを知ってくれている人の存在は大きいのです。※もちろん合わない先生も居るでしょうけどね……。

 先生にとっても、小さい頃から見ているので、成長が分かりますし、上の学年の先生に子どもたちの情報を伝えられます。

 そのほか細かなところでは、時間割などが絵で描かれていて、小学校の時間割制度へのスムーズな以降ができるようにしてあります。遊びから学びへ、人と人との繋がり、子どもの心理的負担を最小限に考えていることがそこかしこから伺えますね。

左の写真は、学校で借りた本の返却BOXです。子どもたちが登校してきたロッカールーム出口に置いてあります。私の息子は、図書館で本を借りるのが大好きなのですが、TSUTAYAのようなこのBOXをみて羨ましがっていました(笑)。

 

さて、話題を変えて、お次はスウェーデンの教育現場で問題は無いのでしょうか?

○不登校の子ども達は居るの?

この学校でも不登校の生徒がいるようです。個人情報の問題があり、詳細はお伝えできませんが、無くす事が中々できないとのこと。対応を聞いてみると、全ての先生が不登校児対応セミナーを受けていて、どの先生と話しをしても同じ対応を取るようにしているようです。先生によって対応が違うと子どもが迷ってしまうという説明でした。

○イジメはあるの?

この学校では無いとの回答でした。ほかの学校でも働いたことのあるエリックさんは、スウェーデンのほかの学校ではイジメもあり対応してきましたが、この学校ではイジメのような問題は起こっていませんとのこと。家族のような環境がこの学校にはあるので、小さなトラブルの段階で気づけるようです。

○移民や外国人は?

この街には、移民の生徒割合が98%の小学校もあり、各学校が特色ある運営をしてすみ分けをしているようです。以前は、校区制のように地区で小学校が振り分けられていたそうですが、今は保護者が学校を選べるようになっているとのこと。「自由に選べる事による問題もあるけどね」と現地に住む友人は教えてくれました。

○先生のうつ病や退職は?

日本の隠れた大問題である先生の心の病に関しては、「それは無いなぁ」とのことで、なぜ好きな仕事をしていてうつ病になるのかと逆に聞かれてしまいました。

○休み中の学童保育みたいなのはあるの?

私たちが伺った時にいた子どもたちは、親が働いているから学校で預かっているとの説明でした。日本のように24時間営業や深夜も仕事をする会社は少ないので、預かる子どもの数は少なく、学校の先生たちが順番で担当されているそうです。

○塾や習い事は?

あまり聞かない。子どもたちを忙しくさせるべきでは無いと、少し強い口調でいわれ、私も激しく同調しました。


さて、いかがでしたでしょうか?

日本では夏休みが終わりましたが、スウェーデンの小学校では夏休みの宿題もありません。家族も休みなので、キャンピングカーなどで避暑地に出かけるのが夏の過ごし方のようです。「家庭」と「学校」が明確に役割分担していることが分かります。大人になっても、家庭と仕事を分ける意識が育つのでしょう。

どんなに立派な教育理念を立てている幼稚園や保育園でも、忘れてはいけないことは、“小学校へ引き継ぐ”ということではないでしょうか。卒園したらハイ終わりっということの無いような、日本の教育環境を作っていきたいですね。

世界には、様々な取り組みをしている学校があります。比べることで、良い点や悪い点に気付く事もあるでしょう。また国内外限らず、ほかの学校を見る機会が持てたらご紹介したいと思います。

最後になりましたが、エリックさん、リングスバーグ小学校の皆さん、今回はありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています!

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この記事を書いた人
レインディア藤原さん

Reindeer 代表取締役社長

レインディア藤原さん

北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。

最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。

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