進化する“劇場型神楽”!益田市の石見神楽『高津神楽社中』の公演へ行ってみた

編集部べーやん
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「石見神楽」の魅力とは?益田市『高津神楽社中』の新作公演を現地レポ

どうもこんにちは。山陰のタウン情報誌「ラズダ」編集部べーやんです。

中国地方でもっとも注目を集める伝統芸能といえば「神楽(かぐら)」!公演には年配の方はもちろん、若者も多数来場。チケット完売は珍しくなく、列をなしてグッズを購入する人の姿も。

「最近の神楽ってどんな感じなの?」と気になったので、今回は神楽公演へ足を運んでみました!

やって来たのは、出雲市佐田町で開催された神楽フェス『スサノオの里 スーパー神楽2025』。

地元の佐田町、石見地方、広島県から全7団体が集結。一度に様々な神楽団の舞台を堪能できる贅沢なイベントです。

益田市の神楽団「高津神楽社中」に密着!

いい機会なので、益田市から出演する石見神楽団「高津神楽社中(たかつかぐらしゃちゅう)」さんに密着させてもらうことに。

出番前の楽屋を覗いてみると・・・。

おお!団員さんがほぼ勢ぞろい!

早朝から長距離移動されたこともあり、着替え前にひと休み中、といったところでしょうか。

部屋には各自の荷物のほか、舞台で使用する小道具がたくさん運び込まれていました。

こちらの方が、「高津神楽社中」二代目団長の藤原博美さん。

初代団長である父・藤原澄男さんが神楽団を創設したのは昭和48年。現在は二代目として団員28名を率いて、全国各地を飛び回っています。

「練習は毎週火・金曜の夜。みんな本業で忙しい中、熱意を持って集まってくれます」。

実に10演目以上のレパートリーを持ち、公演場所やイベント内容によって、「お客さんが何を求めているか」を考えて演目を決めるのだとか。

数ある演目のうち、「高津神楽社中」の代表作は「石見野(いわみの)」。

柿本人麿を題材にした演目で、ストーリーを通じて益田市の歴史や土地の魅力にふれられる作品です。実は九州を題材とした物語が多い「石見神楽」。ご当地を題材にした演目を作れば、神楽を通して益田市のPRにつながると考えたそう。

自ら演目を考え、市内外で積極的に公演を行う「高津神楽社中」は、石見地方で今もっとも勢いのある神楽団のひとつです。

楽屋には小道具がいっぱい!

この日の舞台は、新作演目「戸隠山紅葉鬼女(とがくしやまもみじきじょ)」。

平安時代に京の都から流罪となり、戸隠山に棲み着いた美女「鬼女紅葉」。村人に敬愛されるものの、やがて盗賊を率いて暴れ回るようになったという伝説「鬼女紅葉伝説」が題材です。鬼女紅葉の妖艶な姿、退治の様子が舞台で表現されます。

楽屋には、舞台で使用する「神楽面」がずらり!

いずれも石州和紙を貼り重ねて作られたもの。ただ置かれているだけなのに、鬼面はスゴイ迫力・・・!

表情豊かなお面は神楽団ごとに違いがあり、それぞれの“顔”ともなる重要な小道具。

ちなみに石見地方では、縁起物としてお面を玄関などに飾る習慣があります。一方の舞用のお面は、何十枚も和紙を張り重ねられ、軽量ながらも耐久性が段違い。激しい舞にも耐えられるように工夫が施されています。

紙で作った大量の紅葉・・・!

舞台天井に吊るしたカゴに仕込み、揺らしながら舞台に紅葉を降らせるそうです。

こういった小道具も自前で用意されるのですね。

間もなく開演!ロビーには神楽グッズがずらり

開演前。ロビーに戻ってみると、神楽グッズを販売するお店が!

広島県から神楽団が出演することもあり、広島市の神楽グッズのお店も来ていました。

広島市安佐北区の神楽グッズ専門店『かぐらや』。派手な神楽衣装の生地を使用したポーチ、トートバッグ、がま口など多彩な商品がいっぱい。

実は『かぐらや』は、広島県で唯一、神楽衣装の製造・修理・販売を行っている会社なのです。

店員さんもそれぞれ、ご贔屓の神楽団があるとのこと。石見地方の神楽も近年盛り上がっていますが、広島の神楽熱もかなりスゴそう!

『かぐらや』のお隣は、こちらも広島市から出店されている神楽グッズ専門店『神楽傳(かぐらでん)』。キーホルダー、マグネット、キーホルダー、文房具など、小物の日用品が多数並んでいました。

昨今の神楽は、演者や舞台演出だけでなく、それを取り巻く環境も発展してきている様子。「神楽公演会場にグッズが並ぶ」なんて以前はなかった現象だけに、現在の神楽人気を支える理由のひとつかもしれません。

本番前の舞台袖へ

「高津神楽社中」の出番が近づき、再び楽屋へ行ってみると、すでに着替えが終わって準備万端!

みんな急ぎ足で会場へ向かいます。

この日は7つの神楽団体が出演。入れ替わるたびに、スタッフさんたちが大急ぎで舞台を組み替えます。

「高津神楽社中」が演じるのは、「鬼女紅葉伝説」を題材にした物語。舞台下手には、紅葉を再現した大道具も。

開演1分前、観客席のざわめきがほんのりと聞こえる舞台袖へ。

きっとバタバタだろう・・・と思いきや、みなさん慣れているせいか、動きが素早いだけで冷静で淡々としてる様子。さすが・・・!

チケットは完売。会場には県内外から訪れた500名を超えるお客さん。中には石見地方や広島の神楽団を求めて佐田町まで駆けつけた“おっかけ”の人たちも。

普段は祭りの屋外ステージ、神社やお寺などで観賞することが多い神楽公演。スポットライト、立体的な音響、舞台装置などを用いた“劇場型”で神楽を楽しめるのは、意外と貴重な機会なのです。

いざ開演!会場が沸き上がる圧巻の“劇場型神楽”

「高津神楽社中」の舞台がいよいよ開演!

客席からは「待ってました!」と言わんばかりの大きな拍手。

ネタバレになるので具体的なストーリー描写は控えますが、いわゆる従来の「神事としての神楽」とは一線を画す、まさに“劇場型神楽”と呼ぶべき迫力満点の舞台!

鬼の登場に合わせて、地を這うように流れ出すドライアイスの煙。激しい舞に合わせて閃光のように走る照明・・・。

演者のパフォーマンスに、照明演出、音響、舞台装置のすべてが連動し、とにかく没入感がスゴい!

昔ながらの形にとどまらず、エンターテインメントに昇華された石見神楽。

注目すべきは、それでいて所作の一つひとつには確かな型があること。足の止め方、顔を上げる角度、扇の広げ方など、何百年と受け継がれる神楽の基礎をきちんと個々が体に染み込ませています。

現代の舞台技術を取り入れつつも、神楽としての魂は決してブレていない!その点も「なぜ神楽が人気なのか」の理由のひとつなのかもしれません。

鬼が斬られるラストシーンは、やはり最大の見せ場。

笛、太鼓などによる神楽囃子(かぐらばやし)の音も最高潮で、照明や音響のタイミングもバッチリ。

「高津神楽社中」の新作演目「戸隠山紅葉鬼女(とがくしやまもみじきじょ)」。神楽初心者の方も充分楽しめる舞台なので、観る機会があればぜひ!

「石見神楽」を通じて益田市の魅力を届けたい

約40分間に及ぶ舞台が終わったあと、再び楽屋へ。

団長の藤原さんとともに、神楽団の中心的役割を担っている曽我さんの姿を発見。

「お客さんの拍手も大きくて、とてもやりがいのある舞台でした」と語ってくれました。

「石見神楽と聞けば、どうしても浜田市が取り上げられがち。益田市に神楽団体があること、そして神楽を通じて益田市の魅力を伝えられるように、これからも頑張っていきたい」。

ひとえに石見神楽と言っても、社中によって役者も演目も小道具も様々。地域によって、メンバーらが神楽に託す想いも異なります。

益田市を題材にした演目を披露したり、「子ども神楽部」として地元小学生に神楽の魅力を伝えたりと、県内外で活躍する神楽団「高津神楽社中」。これからも応援していきたいですね~!

派手なエンタメ性がありながら、格式と伝統が備わった「石見神楽」。派手な演出やパフォーマンスが注目されがちですが、その根底にあったのは「伝統を継ぎ、地域を守る」という精神でした。

観客を存分に楽しませる舞台はもちろん、社中ごとの想いや特色、さらにグッズ販売などの商業面の発展も、昨今の神楽人気の大きな要因かもしれませんね。

石見神楽を観に行こう!

浜田市や益田市では、石見神楽を1~2時間程度の短時間で楽しめる定期公演を毎週末開催。荘厳な神社で行われる「夜神楽」の定期公演もあり、温泉施設や宿泊施設とあわせて満喫するのもオススメ。

石見神楽「高津神楽社中」の公演情報は「益田市観光ガイド」、社中の公式Instatgaramなどで確認できるので、ぜひチェックしてお出かけしてみてくださいね!

石見神楽「高津神楽社中」次回公演
イベント名 夜神楽益田公演
日時 7月19日(土)19:30〜21:00(開場19:00)
上演演目 岩見重太郎、妖怪蜘
情報 詳細は公式Instagramを要確認

髙津神楽社中

タカツカグラシャチュウ
情 報:Facebook Instagram

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タウン情報ラズダ編集部

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山陰のタウン情報誌「ラズダ」の編集者。出雲市佐田町出身。
新しいラーメン屋には行かなきゃ気が済まないィィ性格(だそう)。
超ローカルYouTubeチャンネル「Lazuda TV」の立ち上げから、企画・編集・出演を務めています!

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