「カギっ子」、実は約60年前から社会問題に!?子どもの幸福度UPのカギは大人との時間
「カギっ子」、“ひとりの環境”が与える影響とは?
みなさんこんにちは。レインディアの藤原です。
今春は、コロナの減速が感じられ、社会活動が戻ってきた感じがしますね。私自身、代表を務めている一般社団法人コーセリプロジェクトで運営する、子育て学習センターコーセリのオープンや、それに合わせたクラウドファウンディング挑戦。また、雑誌「さんいんキラリ」さんでの紹介など、新しい経験を積むことになった春でした。
そんな慌ただしい日々の作業の中で、古い新聞記事を見つけたので、今回のコラムはそのお話から広げたいと思います。
上記のコーセリは、全国で問題となっている空き家問題への取り組みとして、古民家を改装し育児学習センターを構築しようというもの。
物件の確認や近隣の調査、法人設立に物件取得、改装の方向性やメンバーの選定、サービス内容や理念の制定まで、様々な段階を経てオープンに至ります。今回縁あって出合った物件は、20年以上空き家として存在し、近所のご親戚の方が樹木の伐採や風通しなどの管理をされていた建物でした。
そのため、中に残っている雑誌や新聞、家電製品などは全て昭和時代のモノ。個人的には古いモノが好きなので、最初来た時にはけっこう興奮した記憶。
そんな状態なので、押し入れや蔵、襖の裏紙やタンスの下敷きなどから古い書物や新聞などが次々と。そして、今回のネタとなる昭和39年11月8日の朝日新聞記事を見つけます。
カギっ子に“仮親制度”
学校保健大会 小松市の教諭が成果発表
【金沢】七日、金沢市で始まった全国学校保健大会で、石川県小松市今江小学校八田稔教諭が、問題となっている“カギっ子”のためにつくった「仮親制度」を発表、注目された。
小松市は撚(ねん)糸業が盛んで、人手不足のため一般家庭の共かせぎが多く、今江小学校では全児童三百十六人の約十六%五十一人がカギっ子となっている。カギっ子は一般的に情緒や成績などの点で普通の児童より劣っている。
八田教諭は昨年九月、PTAや校下団体と協議して「仮親制度」の設置を提案、仮親引き受け希望者四十七人から三十五人を選んで依頼した。
同市には戦前「遊び宿」という制度があり、これは学校から帰ったこどもたちが、一カ所に六、七人集って宿主になってくれるおとなといっしょに勉強したり、遊んだりするものだったが、この場合こどもは必ずしもカギっ子ばかりとはかぎらなかっった。
八田教諭はこの「遊び宿」にヒントを得て、仮親には「遊び宿」の経験者になってもらった。学校から帰ったカギっ子は仮親の家に行き、おやつをもらったり、勉強を見てもらう。礼金として一日三十円を仮親に払う仕組みにした。
一年後の観察では①カギっ子の児童はもとより、その家庭環境も落ち着き、豊かになった②校下のひとたちが児童の教育にいちだんと認識を深くした③地域ぐるみの協力体制が徹底してきたーなど効果があがっており、同教諭は今後いっそうこの制度を推進すると報告した。昭和39年11月8日の朝日新聞記事より抜粋
私が生まれるずっと前、記事の対象になった子どもが小学生ということは、昭和30年頃に生まれた人たちがすでにカギっ子として社会問題になっていた事を知り、自分たち世代の問題と感じていたのでとても驚きました。
ここで出てくる「遊び宿」とは、今の学童のようなものでしょう。経済では失われた20年、30年と言われますが、教育現場の問題は約60年も前から存在し問題解決に至っていない事が分かります。
私の過去のコラムで、「今のおじいちゃん、おばあちゃん世代は、育児経験がないから頼りにならない」と書いていますが、そもそもおじいちゃん、おばあちゃん自身が、親からの育児を受けておらず、豊かさが欠けていたのかもしれません。
“ひとりぼっちの環境”が与える影響とは?
カギっ子とは、学校から帰っても家に親や大人がおらず、自分で家のカギを開けて帰る子、親の仕事が終わって帰ってくるまで子どもだけで待っている子どもを指します。
アメリカなどでは、子どもを一人にしておく事自体が、ネグレクト=育児放棄とみなされます。しかし、日本では「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な多数の家庭がカギっ子となったために、多数決の理論で重大問題とはされていません。
少し前、アメリカのニュースで4才の子を一人で公園で遊ばせていたところ、それを近隣住民が警察に通報し、親は逮捕される、なんて報道も。アメリカでは、州によって違いはあるにせよ、13才未満の子どもを長時間ひとりにすることはネグレクトと見なされます。
日本は、治安の良さもあり、社会では問題とさえ捉えられていません。ですが、子どもを一人にする事は、孤独感や疎外感を植え付けることに繋がり、それが大人への不信感、そして、大人になった時に年長者を邪魔者扱いする心理へと繋がっているのではないでしょうか。
記事では成果として、児童はもとより、「家庭が豊かになった」と書いてあります。
子どもを豊かにする、幸福度を上げる事が両親や家庭、それが地域や社会へと広がる第一歩であるのではないでしょうか。
また、校下(金沢弁で通学区域・校区の事)の人たちが教育に認識を深くしたともあり、地域住民へ教育への意識を高める事が、次の地域ぐるみの協力体制につながり、いい循環が生まれてきたと推察できます。
大事なのはやはり、「大人が子どもとかかわる時間を増やす」こと
しかし、それも60年も前の話。現代社会ではもっと問題や社会構造が複雑化してきています。
でも、変わらないものもあるでしょう。それは、子どもの心、子どもにはやはり愛情を持った大人との時間が必要なのです。
最低賃金を上げろとか、所得倍増計画とか、政治家は言いますが、1時間で千円・1万円稼ぐよりも、子どもと1時間遊ぶ事の方が大きな投資となることが分かっています。
ある研究では、教育の投資は経済への投資の4倍の効果が見込めると、しかし、回収に時間がかかり過ぎるために人々がその投資を選ばないと。でも、もし60年前にもっと本気で子どもへの時間的投資をする判断ができていたら・・・。今の日本はもっと幸福に包まれていたかもしれません。
将来の日本を救うカギ、それは今も昔も子どもが持っているのかもしれませんね。
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この記事を書いた人
Reindeer 代表取締役社長
レインディア藤原さん
北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。
最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。
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