どうして育児を「辛く」感じるのか。その理由と対策・考え方をひも解く
どうして育児を辛く感じるのか。その理由を考えてみましょう
藤原さんの育児学Vol.86
みなさんこんにちは!レインディアの藤原です。
冒頭、まずは皆様のおかげで、2022年のラズダの記事閲覧数でNo.1を獲得できました。
私のつたない文章を多くの方に読んでいただき恐縮すると同時に、とても幸せです。ありがとうございます。
今回、No.1になったコラムは、不登校の社会的背景をつづった記事でした。日本で増大の一途をたどる不登校問題。私の言葉に「説得力がある!」とお声をいただいた方もおられました。
この想いが種となって、世の中の子ども達を取り巻く社会が良くなっていくことを願っています。
今回のコラムは、育児に注目が集まりだしている今日。
少し方向性に疑問を感じるところもあるので、社会的背景シリーズではありませんが、日本人が育児を辛いと感じてしまう、社会的背景を探っていきたいと思います。
育児のどこに辛さを感じるのでしょうか?要因は何?
みなさんは、育児が辛いですか?
政府が“育休中の学び直し”を提案し、世間のバッシングを浴びています。
ワイドショーなどでママ達の声を聞いていると、「育児中にそんな余裕はない!」、「育児で大変なのにさらに勉強しろとは何事!」、「育児をしてない人間の考えることだ!」などと怒りの声が多数。
育児をしている女性に対して、さらなる課題を与えるアイデアに対し、開いた口が塞がらないと言いますか、「まずは男が動けよ!」というのが育児経験者の意見でしょう。
一方、海外では育休中の学び直しが効果を上げている国もありますし、学びたい意欲のあるママ達がいるのも事実。
強い反発が起こる背景に、そもそも日本の育児が辛いと感じている現状があり、順番が間違っていなければ、ここまで反発は起こらなかったのだとも。
そこで考えたいのが、今回のコラムタイトルでもある、なぜそんなに日本人は育児が辛いと感じているのか?
ですが、おそらく政治家や世間のコメンテーターはこの部分の理解が浅いのだと思います。
東京都では、育児対策として「1ヶ月に5000円を支給する」ニュースが歓迎されていました。が、私からすると、これもまさしく悪循環に陥る一手。これまでの日本が繰り返してきた、口止め料的な根本解決にならない育児対策であると考えています。
そもそも、日本では資産何億円も持っているお金持ちの家庭でさえ、育児が辛いと感じているのですから、お金が問題解決にならない事を覚えなければいけません。
とはいえ、そんな資産家の家庭が少なく、参考データとして人々が知らないのも無理はありませんが・・・。
では、どこになぜ辛さを感じているのか?
これをひも解くと、日本の教育や歴史、社会環境作りの失敗が影響していることが見えてきますよ。以下、箇条書きで背景を挙げてみました。
コミュニケーション力がそもそも弱い
現代の日本人は、コミュニケーション力が弱いと指摘されてから数十年。育児に必要な重要能力に、子どもと上手にコミュニケーションがとれるかどうかがあります。
赤ちゃんが泣く・叫ぶ・叩く、奇声を上げる、逆に笑わない、無反応などの状況も、コミュニケーション力がある人の方が上手に対応していると感じます。
相手の気持ちを考えたり、正しく推測したり。そしてそれをジェスチャーや表情でも伝えられる人は、言葉で理解し合えない外国人や、子どもとも信頼関係を築けるワケです。
育児の基本を知らない、育児が辛い理由を探している
今までのコラムでもずっと書いてきていますが、経済発展した日本は、その反面、家庭を犠牲にしてきた歴史があります。
そのため、今の日本人は、家庭の構築の仕方も知らなければ、育児の基本さえ学ぶ機会がない。
また、インターネットなどで誹謗中傷が後を絶たないように、悪いところや辛いところ、マイナス要因に視線が行きがち。“人の不幸は蜜の味”的な思考性の人が増えている感じも受けます。
散歩中に、道ばたに咲いている花に目がいくのか、落ちているゴミに目がいくのか。どちらも必要な気付きですが、そのバランスが悪いと、散歩自体が楽しくならないですよね?
育児の楽しいところを知らないと、楽しむことができないハズです。
お金があれば育児が楽になるという妄想を抱いている
先にも書きましたが、私は東大の先生夫妻や東京のタワマンに住むトレーダー夫妻、お医者さん夫妻、企業の幹部夫妻など、資産や社会的地位を持つ家庭のママ達からも悩みを聞いてきました。
その内容は、所得の低い鳥取県の世間一般の家庭と同じ様な育児の悩み。夫が育児に非協力的とか、ついつい子どもを強く叱りすぎて後悔しているといった内容。
そもそも、恋愛結婚が多い現代社会で、育児も夫婦の共通義務とし、苦労も分かち合いたいと考える女性の気持ちがあります。お金ではその気持ちは解消されないですよね。世界のセレブがどんな状況なのかを見れば、火を見るよりも明かでは?
父親が育児をしない
政治家が何を発信しても国民の理解を得られないのは、日本人男性のほとんどが育児をしていない事による不満があるのではないでしょうか。
その昔は、亭主関白などが日本男子のイメージで、世界から人気の大和撫子の真逆で、もっとも人気のなかった日本男性。
現代社会では、少しは改善されてきていますが、海外のようにパパがベビーカーを押しながら、パパ友と育児の課題を語り合うといった景色は多くの人が見たことないのでは?
育児を「妻の仕事を手伝う」視点である限り、ママの辛さは改善しません。育児を自分事として夫は考えつつ、妻の意見を尊重できるまで行けば、日本人の育児は楽しめるのかもしれません。
時間に縛られる
日本の育児は、時間に縛られることが多く、親の都合に合わせる制度ができていません。
保育園や幼稚園を整備しても、何時までに預けて、何時までに引き受けに来てくれと言われ、できないと追加料金が発生。そのため、朝起きる時間、寝る時間、食事の時間、1日の過ごし方を自分では選べなくなっています。
私も子どもを保育園に預けた経験がありますが、移動時間と準備時間を24時間の中で考えると、その比重が大きかったなと。
1年でその時間がもったいないと気付き、預けるのをやめ、仕事の方を減らしました。すると一気に育児が楽になった記憶があります。時間に真面目な日本人の感覚が、育児を辛くさせているのかもしれません。
親世代が役に立たない
これは本当に多く寄せられる相談です。
当コラムでは何度も書いているので、ここでは細かく解説しませんが、年を重ねたからといって育児の能力は上がりません。
人生経験と育児の能力は比例しないので、聞く耳を持たない年配者に、育児を任せることがどれだけ危険かを知るべきです。
選択肢を減らす育児をしている
東大に行かせるために、一流スポーツ選手になるため、音楽家を目指している。こういった理由で小さい時から英才教育という名の体罰が放置されています。
社会主義国などの英才教育と何が違うのでしょう?
子ども達の選択肢を増やし、可能性を広げることが教育の基本目標でなければ、大人の道具として子どもが使われてしまします。子どもの成績が伸びない事が育児の負担になっているのであれば、それは親の教育指針が間違っていると考えを改めるべきです。
子どもの声を聞くだけ、それだけで育児負担が楽になっていった例をたくさん見てきています。
脳内物質が足りない
単純に「幸せホルモン」と言われるセロトニン不足で、育児を辛いと感じている人が増えているのかも。
太陽を浴びていない 高断熱住宅やマンション暮らし、ネット社会で物も翌日に届く。生活リズムがとれていなかったり、栄養が偏っていたりと、物理的に改善できる要素もあります。
これは、育児に限らず、やる気が起きない、楽しいと感じられない場合に当てはまるようなので、セロトニンを調べてみてくださいね。
子どもとの関係と環境づくりを心掛けたいですね
このほかにも、育児が辛いと感じる原因はたくさんあります。
時代背景や蓄積した問題があり、それが今の私たちを苦しめている面もあるでしょう。過去に戻って経済発展や教育を改められないので、今の私たちが未来へ向けて一つひとつ予防策を考えていく必要があると思います。
この“予防”も現代日本人は苦手分野ですが、予防こそ様々な社会コストを下げる重要な視点。
私の専門とする北欧に繋げれば、例えばフィンランドは虫歯対策としてキシリトールガムを開発し、子ども達に提供しました。
虫歯になった患者を救うために歯医者を増やし、様々な治療法を開発。創薬するコストよりも、最初から虫歯になる人が減れば、痛い思いをする必要がなくなり、コストもかからないからです。
子どもが孤独になってから、子ども食堂やスクールカウンセラーの制度を拡充するよりも、そもそも孤独にしない社会を作らねばなりません。
日本の警察は、事件が起きた後でなければ対応しないと言われますが、犯罪がどんどん増えてからでは、社会的コストは増すばかり。悲劇は繰り返されてしまいます。
裁判所で語られるように、犯罪者を増やさないためには、子ども時の環境作りが重要なのです。
みなさん、毎日子どもの笑顔を見て寝ていますか?
一日一善ならず、1日1回は子どもを笑わせてはどうでしょう?
子どもを笑わせる力をみんなが持てば、日本は変わるかもしれませんね。
鳥取・島根のお仕事情報
この記事を書いた人
Reindeer 代表取締役社長
レインディア藤原さん
北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。
最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。
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