学校の先生の心の病を考える。問題の根本はドコにある《前編》
学校の先生の心の病を考える《前編》
藤原さんの育児学Vol.84
あけましておめでとうございます。レインディアの藤原です。
2023年もよろしくお願い申し上げます。
昨年は、私をずっと支えてくれた祖母が他界し、行きつけの飲食店もなくなり、人生で長らくルーティーンで回っていた場所から離れ、何となく寂しい気持ちの一年。
世界では戦争が起こり、著名人が亡くなるニュースも多かったような事も影響しているのかも。
しかし、新たな出会いや新たな取り組みも始まった2022年。種まきの年だったと思えば、見た目に寂しいのも仕方がありません。今年は、畑に芽が出て新緑に囲まれる一年にしたいと思います!
さて、新年最初のコラムは「教職員の心の病」について書いていこうと思います。
先日のニュースで、一昨年度に「心の病」で休職した公立の小中高校の教職員数が、過去最高を更新したと出ていました。
記事によると1ヶ月以上、病気休暇を取っている人を合わせると、統計開始後初の1万人以上。文科省はハッキリとした原因は分からないとのことですが、いったいこの何十年と何をしているのでしょうか?
少子化が叫ばれて久しく、教育現場の崩壊は国の危機であると思うのですが、分からないで通用する日本の現状は恐ろしいです。
学校の先生だけじゃない。若い人の間で増える心の病
みなさんは、教職員の精神疾患が増えている理由は何だと思いますか?
- 若手教員へのフォローが足りない?
- 残業代がないことが問題?
- 部活動などで忙しすぎるから?
など、目の前の問題提起ばかりされていますが、私はそれらを解決しても根本的な問題解決にはならないと考えます。
そもそも、厚生労働省のデータを見れば、国民全体でも精神疾患の患者数はずっと右肩上がり。
そして、海外の研究では精神疾患になった人の75%が、20代半ばまでに発症しているとの話も聞きます。
若手教職員に心の病が多いのは、教職員に限った事ではなく、社会全体で増えている中で、文科省の発表タイミングでニュースとして出てきた、という認識が正しい捉え方かもしれません。
「現代の若者が精神疾患になりやすい」と仮定すると、原因の見つけ方が変わってきますよね。
問題は「学校の中」にあるのではなく、若者が育つ「社会環境」にあり、長年の蓄積によって精神疾患になりやすい人間を育てている、としたらどうでしょう?
私は、多くの育児や教育関係者、大学の教授や医師、様々な研究者や専門家と呼ばれる人と会ってきましたが、そのすべての人に自身での育児経験が乏しいという事に驚愕した事があります。
幼い頃から大人まで、ストレスを重ねてきたことが要因か?
教育先進国である北欧の国・フィンランドでは、修士号以上取得でなければ教員になれません。また、母親ばかりでなく、両親の育児休暇が年単位で義務。
教育機会の平等性から学習塾は認められていません。
学校では順位を出すテストもなく宿題もなし。一方で夏休みは2ヶ月もあり、学費はもちろん無料です。
フィンランドは、冬場の日照時間が少ないなど土地柄もあり、元々うつ病や自殺者が多く、その対策として様々な取り組みが行われてきました。
日本では最近、保育士が足りないからと、資格取得のハードルを引き下げ。父親の育休などは、子どもの記憶にまったく残らない期間しか与えられていません。
子ども目線で考えれば、質の低い保育士や教員と過ごす時間はストレスですし、一緒に過ごした時間の少ない両親との時間もストレス。塾も習い事もストレス、テストが社会に出るまで10年以上続きストレスばかり。
この冬休みも、我が子たちにたくさんの宿題が出ていますが、これもストレスですよね。
立派な大人になるべく、ずっとストレス環境に耐えて頑張ってきたのに、社会に出てからもストレスばかりでは心が持たなくなってしまう。子ども達にはどうしようもないのです。
また日本では、「ストレスを与える事が教育には必要」と捉えられている風潮も。そのストレスに打ち勝ってこそ得られる勝利の美酒、とでも考えているのでしょうか。
○○式と呼ばれるような、子ども達を枠にはめようとする手法は、洗脳であって教育ではありません。教育とは、子どもの先天的・後天的能力を伸ばすこと、加えて自立して生きていく力を得るための知識を教える事、ではないでしょうか。
子どもは生まれながらに学習意欲を持っています。大人に与えられるストレスほどムダなものはない、とは私の持論。
躾と称して、体罰や選択の自由を奪っている大人がたくさんいます。
小学生に高校の問題集をさせたり、朝から晩までピアノを弾かせたり。選択肢なく、ひとつのことをさせられているのは、スポーツ選手にも散見されます。
しかし、現実はそれらストレスの一つひとつが、子どもの心を弱めていたのかも。
最近、日本では子ども達の居場所作りがトレンドに。子どもの居場所がない社会って、いったいこの国はどこまで停滞しているのだろうと。
教職員の精神疾患は、「先生たちにも居場所がない」ことを表しているデータではないでしょうか?
学校という建物の中に存在するのは、子どもと教職員しかいないはず。では、一体どうすればいいのでしょう?
後編では、いくつかの提案も出しながらコラムを進めていきたいと思います。
《後編は1月16日(月)公開予定》
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この記事を書いた人
Reindeer 代表取締役社長
レインディア藤原さん
北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。
最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。
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